2018年3月17日から25日までフランスに行ってきました。パリとトゥールーズの空港や博物館をまわり
6機のコンコルドを見てきました。今回はその様子を少しレポートします。


− コンコルド −



1969年3月に初飛行に成功した超音速旅客機「コンコルド(Concorde)。
イギリスのBACとフランスのシュド・アビアシオン(のちのアエロスパシアル)が共同で開発した機体で、
全20機が製造されました。
通常の旅客機の倍以上の速度「マッハ2.0」で飛行することができましたが、燃費の悪さやソニック
ブーム(衝撃波が生む轟音)、時代背景の影響で導入した航空会社は"エールフランス"と"ブリティッシュ・
エアウェイズ"の2社のみでした。(ブラニフ航空が一時期リース)
定期路線も限られ、日本に飛来したのはデモフライトを含み5回のみでした。

2000年7月にはエールフランスのコンコルドがパリ近郊で墜落し、多数の犠牲者を出しました。
その後、改修が施されて運行を再開しましたが、老朽化やニューヨークの同時多発テロの影響で
航空需要下したため、2003年に11月に退役となりました。
退役したコンコルドはヨーロッパやアメリカなど各地の空港や博物館に寄付され、展示されています。


【 製造されたコンコルド一覧 】

製造番号レジ会社初飛行最終飛行現在
001F-WTSSプロトタイプ1号機1969年3月2日1973年10月19日ル・ブルジェ航空宇宙博物館(フランス)で室内展示
002G-BSSTプロトタイプ2号機1969年4月9日1976年3月4日イギリス海軍航空博物館(イギリス)で展示
101G-AXDN量産先行型1号機1971年12月17日1977年8月20日ダックスフォード帝国戦争博物館(イギリス)で室内展示
102F-WTSA量産先行型2号機1973年1月10日1976年5月20日オルリー空港隣接のデルタ博物館(フランス)で屋外展示
201F-WTSB量産型1号機AF1973年12月6日1985年4月19日アエロスコピア航空博物館(フランス)で室内展示
202G-BBDG量産型2号機BA1974年2月13日1981年12月24日ブルックランズ・ミュージアム(イギリス)で屋外展示
203F-BTSC量産型3号機AF1975年1月31日2000年7月25日2000年7月、パリで墜落
204G-BOAC量産型4号機BA1975年2月27日2003年10月31日マンチェスター空港ビジターパーク(ドイツ)で室内展示
205F-BVFA量産型5号機AF1975年10月25日2003年6月12日スミソニアン国立航空宇宙博物館(アメリカ)で室内展示
206G-BOAA量産型6号機BA1975年11月5日2000年8月12日国立スコットランド航空博物館(スコットランド)で室内展示
207F-BVFB量産型7号機AF1976年3月6日2003年6月24日ジンスハイム自動車・技術博物館(ドイツ)で屋外展示
208G-BOAB量産型8号機BA1976年5月18日2000年8月15日ロンドン・ヒースロー国際空港(イギリス)で屋外保存
209F-BVFC量産型9号機AF1976年7月9日2003年6月27日アエロスコピア航空博物館(フランス)で屋外展示
210G-BOAD量産型10号機BA1976年8月25日2003年11月10日イントレピッド海上航空宇宙博物館(アメリカ)で屋外展示
211F-BVFD量産型11号機AF1977年2月10日1982年05月27日1994年に解体処分
212G-BOAE量産型12号機BA1977年3月17日2003年11月17日グラントレー・アダムス国際空港(バルバドス)で室内展示
213F-BTSD量産型13号機AF1978年6月26日2003年6月14日ル・ブルジェ航空宇宙博物館(フランス)で室内展示
214G-BOAG量産型14号機BA1978年4月21日2003年11月5日ミュージアム・オブ・フライト(アメリカ)で室内展示
215F-BVFF量産型15号機AF1978年12月26日2000年6月11日シャルル・ド・ゴール国際空港(フランス)で屋外展示
216G-BOAF量産型16号機BA1979年4月20日2003年11月26日ブルックランズ・ミュージアム(イギリス)で屋外展示

○は今回見ることができた機体


 アエロスコピア航空博物館


【 量産型1号機 】

トゥールーズ・ブラニャック国際空港(TLS)に隣接するアエロスコピア航空博物館では
2機のコンコルドが展示されています。
室内に展示されているのはコンコルド Series100、製造番号201、機体番号F-WTSBです。
1973年12月に初飛行した量産型初号機で1982年までエールフランスで活躍していました。
1982年からシャトールー空港でストアされていましたが、1985年にトゥールーズに戻り保存、
2015年からアエロスコピア航空博物館で室内展示されています。
飛行回数423回、総飛行時間は909時間でした。


L1ドアから内部にも入れます。まずは外観から見ていきます。








オージー翼も下からじっくり眺められます。


ロールス・ロイス/スネクマ オリンパス593エンジンのノズル。


内部を見ていきます。コクピットです。透明パネルがあり、中には入れません。


L1ドア横には銘板があります。


機内前方はいろいろな機器が展示されています。


客室窓は一般的な旅客機に比べるとかなり小さいです。A380のモデルが見えますね。


機体後方には座席が配置してあります。中には入れません。


コンコルドの安全のしおり。



【 量産型9号機 】

屋外に展示されているコンコルド Series101、製造番号209、機体番号F-BVFCです。
1976年7月に初飛行した量産型9号機でエールフランスで活躍していました。
2003年6月に退役し、2015年からアエロスコピア航空博物館で展示されています。
飛行回数4,358回、総飛行時間は14,332時間でした。


エールフランスのオリジナル塗装です。(天気が良かったらもっと映えただろうなぁ...)


屋外にある割には手入れが行き届いていてきれいな状態です。翼後ろのエレボンが下がっています。


階段がついていますが、中に入ることはできません。


こんな角度から眺めるコンコルドもかっこいいです。


4輪ボギーの主脚。ミシュラン製のタイヤを装備しています。


ロールス・ロイス/スネクマ オリンパス593エンジン。



【 番外編:コンコルドのコクピット 】

こちらはアエロスコピア航空博物館の一角に置かれているコクピットです。
どの機体から取り外されたものかはわかりませんが、紛れもなくコンコルドのコクピットです。



こちらのほうが幾らか見やすいです。操縦桿が独特な形をしています。







 デルタ博物館


【 量産先行型2号機 】

パリ南部にあるオルリー空港(ORY)近くのポルト ドゥ レソンヌでは1機のコンコルドが
屋外展示されています。一応、デルタ博物館という施設が管理しているようです。
1973年1月に初飛行した量産先行型2号機で製造番号102、機体番号F-WTSAです。
量産機と異なる部分も多く、主に試験飛行に使用されていました。
飛行回数は314回、総飛行時間は656時間37分でした。

1976年5月にラストフライト、その後オルリー空港で展示されています。
左舷側は"エールフランス"、右舷側は"ブリティッシュ・エアウェイズ"の旧塗装となっています。


機体はあまり状態がよくないようです。





 シャルル・ド・ゴール国際空港


【 量産型15号機 】

シャルル・ド・ゴール空港(CDG)に展示されているコンコルド Series101、製造番号215、
機体番号F-BVFFです。
1978年12月に初飛行した量産型15号機でエールフランスで活躍していました。
2000年のコンコルド墜落事故を受け、2002年4月より安全対策のための改修作業に入りましたが、
60%終えたところでエールフランスが運行停止を発表したため、作業は中止され飛べない状態となりました。
結果、2000年6月のチャーターフライトがラストフライトとなりました。
2005年頃よりシャルル・ド・ゴール空港で展示されています。
飛行回数4,259回、総飛行時間は12,421時間でした。


角度のついた台座に乗っているので今にも離陸しそうな感じです。


内装はほとんど撤去されているようですが、外観はよい状態です。





 ル・ブルジェ航空宇宙博物館


【 量産型13号機 】

ル・ブルジェ空港(LBG)に隣接するル・ブルジェ航空宇宙博物館に展示されている
コンコルド Series101、製造番号213、機体番号F-BTSDです。
1978年6月に初飛行した量産型13号機でエールフランスで活躍、1996年にはペプシ塗装に
なり注目を集めました。
2003年5月のフライトを最後に引退し、ル・ブルジェ航空宇宙博物館に展示されています。
飛行回数5,135回、総飛行時間は12,974時間でした。


室内展示なので状態は良さそうです。


プロトタイプ1号機(F-WTSS)と向き合う形で並んでいます。








テールスキッドにはタイヤが付いています。


普通の旅客機に比べるとノーズギアはかなり長いです。


ライトアップされた吸気口。カバーされていないので内部まで見えます。エレボンは下がっています。


オリンパス593エンジンのロゴ。F-BVFCのものと少し違いが見られます。


排気ノズル。片方は逆噴射時を再現しています。


コクピット。こちらも中には入れません。


機内は半分が展示スペースになっています。


機体中程には座席がそのまま残されています。


ヘッドレストカバーの付いた機体後方の座席。奥のマネキンが怖いです...(笑)



【 プロトタイプ初号機 】

記念すべきコンコルド試作初号機もル・ブルジェ航空宇宙博物館に展示されています。
製造番号001、機体番号F-WTSSです。
1969年3月に初飛行し、各種試験や日食観測に使用されました。
1973年10月に引退し、ル・ブルジェ航空宇宙博物館に展示されています。
飛行回数397回、総飛行時間は812時間19分でした。


塗り替えはおこなわれていますが、塗装は当時のものを再現しています。


ノーズの雰囲気も量産型とは違います。


"Concorde"の文字が誇らしげです。


バイザーは小さな窓が付いているもので、印象は量産型とは大きく異なります。量産機はガラス張りです。


プロトタイプ機の客室窓は量産型よりも大きいです。


尾翼。テールコーンの長さが量産型よりも短かいです。


テールスキッドの形状も異なります。タイヤは付いていません。


メインギア。細かいところに違いが見られます。


エンジンの排気ノズルの形も違います。


機内へは後部から入ります。


試験用なので座席などはありません。


コクピット。こちらも量産型とはかなり違います。




いかがだったでしょうか。
多くの人々が憧れ、未来の乗り物として夢見たコンコルドをお楽しみいただけたでしょうか。

コンコルドが退役してから、今年で15年となります。
事故で喪失したF-BTSCと解体されたF-BVFDの2機を除く18機は世界各地の空港や博物館などで
現在もなお大切に保管、展示されています。
皆さんもかつての夢の超音速旅客機に会いに行ってみてはいががでしょうか。